- 「入職したばかりで辞めたいなんて甘えかも」
- 「嫌なことから逃げたらダメなの?」
- 「今は仕事を頑張る気になれない」
とはいえ、周りの目が気になったり、親に相談しても頑張りなさいと言われるばかりで、気軽にはやめられないですよね。
でも、看護師を20年続けてきた今だから言えます。辞めたい気持ちは甘えではなく、自分を守ろうとする「正常な反応」です。「辞める」選択をしてもいいんです。
ただし新人の頃の早期退職は、人によっては後悔したり、転職先を探すときに不利に働くこともあります。
あなたにとって、本当に必要な選択ができるように、まずはこの記事を最後まで読んで、気持ちの整理をしてみましょう。
新人看護師が辞めたいと思うのは「甘え」じゃなく心のSOS
新人看護師は、医療という命を預かる特殊な環境に置かれ、今まで経験したことのない強いストレスにさらされます。
ふだんであれば適応できるストレスでも、限界を超えると心や体への負担が大きくなり、自分の力では対処しきれなくなってしまいます。
人は日常生活でさまざまなストレスを受けていますが、いつもより強いストレスが長期間にわたると、心身に症状として現れることがあるのです。
- 先輩が見守る中、患者に実施する採血や注射(無言の圧)
- 患者からの「失敗しないかな」という視線や「大丈夫なの?」という言葉(失敗できない空気)
- 患者から何か症状を訴えられた時の緊張(重症度が判断できずどうしようという不安)
- 患者や家族から質問されたとき(答えられない恐怖)
- 白衣を着れば、みんな同じ「看護師」(”新人だから”は通用しない責任の重さ)
ふだん、新人看護師があたりまえのように行っている業務の中で感じるストレスが積み重なり、心の負担となっているのです。
「辞めたい」と感じるのは個人の「甘え」ではなく、限界を迎えた心からの自然なサイン。
その気持ちを否定せず、自分の心の声に耳を傾けること。そして必要であれば、周囲にサポートを求めることが大切です。
なぜ新人看護師は辞めたくなるのか?主な4つの理由
- 理想と現実のギャップ
- 知識不足と技術習得の不安
- 人間関係のストレスと職場の雰囲気
- 心身の疲労と過酷な労働環境
理想と現実のギャップ
新人看護師の中には、学校の成績が良くて「就職後にすぐに活躍できる」と期待していた方もいるかもしれません。
もちろん、学校で学ぶ技術は必要ですが、職場では技術以外に必要なこともあります。
活躍できると思っていた理想と異なると、「看護師以外の向いている仕事があるかも」と感じて、辞めたくなってしまうのです。
学校で学ぶこと | 職場で求められること |
疾患の基礎知識、看護理論、解剖整理など | 患者ごとの状態変化を理解し、即座に判断する力 |
バイタル測定、注射、吸引など基本的技術 | 応用的な手技(多重課題の優先順位付けなど) |
学校での学びは知識ベースですが、現場で求められるのは知識ありきの応用力なのです。
中には、即戦力として活躍する新人もいますが、そういった看護師は極一部です。
職場のルールや忙しさなどに慣れるには時間がかかります。
「向いていないのでは」という理由だけで退職なら、もう少し働くことで解消できますよ。
知識不足と技術習得の不安
現場では、思ったよりも”わからない・できない”ことが多く、自分の未熟さを痛感する場面に直面します。
それが自信喪失や不安につながり、心が折れそうになるのです。
新人の知識レベル | 必要な知識レベル |
採血に必要な物品、手順、採血部位 | 患者個々の血管から失敗せずに採血できる血管をみつける知識(走行、弾力、細さなど)と的確な挿入角度 |
注射に必要な物品、手順、注射部位 | 使用薬剤の効果、副作用と観察、患者に説明する内容 |
急変患者を発見したときの初動動作(CPR) | 急変かどうかの判断、CPR、挿管介助の必要物品と手順 |
これらは、1~2回で習得するのは難しく、繰り返しの経験とフィードバックが必要です。
こうした技術をなかなか習得できないと、「自分には向いてない」「患者さんに迷惑をかけるのでは」と不安になり、辞めたい気持ちが強まってしまいます。
このように、知識や技術の不安は自己肯定感を奪い、看護師の心を揺らし続ける要因となります。
人間関係のストレスと職場の雰囲気
忙しい現場では、先輩から厳しい口調で注意されたり、声をかけにくい雰囲気が生まれたりしやすくなります。
相談したくても気を使って言い出せず、孤立感を深めてしまうケースも少なくありません。
「安心して相談できない空気」は、新人にとって深刻なストレスとなり、「もっと話しやすい職場がいい」「優しく教えてくれる人のもとで働きたい」といった思いが芽生える原因となります。
日本看護協会の調査でも、新人看護師の離職理由の約30%が「職場の人間関係」に関連していると報告しています。
「なんでこんなこともできないの?」「前にも言ったよね?」といった言葉に傷ついた経験があるのではないでしょうか。
私自身、厳しい口調の先輩に話しかけられず、やっとの思いで質問しても「自分で解決して」と言われたことがあります。
人間関係のストレスや相談できない環境は、新人の心を孤立させ、離職の引き金になりかねません。
心身の疲労と過酷な労働環境
命を預かるという責任感に加え、長時間労働や夜勤が続く中で、体力的にも精神的にも余裕をなくしてしまうものです。
新人のうちは体も心もまだ慣れておらず、急激な環境の変化に順応できずに疲れが蓄積していきます。
日勤は8時間ですが、患者の状況次第では休憩が取れず、残業で19時を過ぎることもあります。
夜勤は2交代制で16時間勤務、3人で多くの患者をみるため、2時間の休憩すら取れないこともあるのが現実です。
さらに、委員会の仕事や研修会など、勤務外になってしまうことも多く、日勤終わりや夜勤明けに対応する人もいます。
「このまま続けるのは無理かもしれない」と思ってしまうのは、当然の感情といえるでしょう。
心と体の両方が疲弊したとき「辞めたい」と感じるのは、自然な反応であり、自分を守るための正直なサインでもあるのです。
参考:日本看護協会「2024年 病院看護実態調査」結果
厚生労働省医政局「新人看護職員研修の現状について」
新人看護師がすぐに辞めた方がいい危険なサイン
次のような症状が続いている場合は、心と体が限界を超えている状態です。
- 食欲がなく、食べられない
- 眠れない
- 朝起きて仕事のことを考えると涙が止まらない
- 原因不明の体調不良が続く
これらは、単なる疲れではなく「心のSOS」です。
無理を続けてしまうと、うつ病や適応障害など深刻な状態へ進行する危険性があります。
我慢せず、心療内科の受診や休職を検討してください。
私の経験|辞めたい気持ちが限界だったとき
新卒で内科病棟に配属された私は、「頑張ろう」という前向きな気持ちでいっぱいでした。
しかし現実は厳しく、忙しい先輩に質問すると「そんなこともわからないの?」と冷たく言われ、患者さんの対応で困っても「あなたが対応しなさい」と突き放されてしまう。次第に先輩に声をかけるのが怖くなっていきました。
やがて眠れなくなり、動悸がして、食事も喉を通らなくなりました。そして、3ヶ月目、全身に湿疹が出て医師から出勤停止を言い渡されました。
実家に帰ると、母からは「頑張りなさい」と励まされましたが、その言葉すら受け入れられず、辞めた方がいいかもしれないと泣いていました。同期に置いていかれる不安と焦りで、どうしたらいいのかわからなくなっていました
でも1週間ほどの休みの間に、少しずつ気持ちが落ち着いてきました。「こんなに心が疲れていたんだ」と、ようやく気づけたのです。
今思えば、あの時間は自分を守るために必要なお休みでした。あのとき辞めずに踏みとどまったからこそ、今の私があります。
数年後、当時の先輩から「正直、あなたが一番最初に辞めると思っていたよ」と言われました。あの1週間の休みが、私にとってのターニングポイントだったのだと思います。
新人看護師が「続ける」か「辞める」かを判断する3つのステップ
感情だけで判断すると、正しい判断ができずに後悔することもあります。
客観的な視点を持つことが必要です。
「続ける」か「やめる」かで答えが出ないときは、次のステップを順番に試してみてください。
ステップ1:現状を整理する
- 今の状況を紙に書きだす
「何が一番つらいのか?」「いつが一番苦しいのか?」などの「つらいこと」や「できるようになったこと」を書き出して見える化しましょう。 - 自分の気持ちを素直に書き出す
「○○さんに話しかけるのが怖い」「頑張りたい気持ちもある」など、自分の感情を正直に書いてみましょう。
ステップ2:専門家に相談する
ひとりで抱え込まず、専門的な立場からアドバイスをもらうことも大切です。
- 職場のメンタルヘルス相談窓口を利用する
- 心療内科やカウンセラーに相談する
ステップ3:判断基準を明確にする
「何を大切にして決めるか」を自分の中ではっきりさせましょう。
- 心身の健康が一番大事
今は心を守ることが最優先。辞める、または休職を選ぶ。 - 将来のキャリアや目標を大事にしたい
ここでしか学べないスキルがあると感じているなら、サポート体制があるかの確認をする。 - 人間関係のストレスから離れたい
指導方法が合わないと感じたり、特定の先輩との関係がストレスで出勤が苦痛なら、異動や配置換えを視野に相談する。 - プライベートの時間を大切にしたい
心の余裕がなくて趣味もできないと考えるなら、今の働き方が合っていないかもしれないので、転職等も視野に入れる。
辞めることも、続けることも、どちらも正解になり得ます。
あなた自身を守ることが何よりも大切。
もし今、「続ける」か「辞める」かで悩んでいるのなら、「何を大切にして決めるか」で考えてみてください。
まとめ:心と体のサインを見逃さず、自分を守る選択を
新人看護師の辞めたい気持ちは甘えではなく、あなたの心と体からの大切なサインです。
まずは紙に自分の気持ちを書き出し、専門家に相談しましょう。適切なサポートを受けながら、あなたがまた笑えるように、自分を守る選択をしてください。
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